皆さんこんにちは。Rush Prosの井川です。
今年3回目のプロツアーである
プロツアー『久遠の終端』に参加してきました!
結果だけ先に書いてしまいますと、
10-6の好成績を残すことができ、次回プロツアーの権利を獲得!!前回のプロツアーで初日落ちしたことにより崖っぷちでしたが、なんとか次に繋げることができて嬉しいです。
今回、森山ジャパンからはトップ8進出はならなかったものの
(修平さん、惜しい!)、
日本勢からは堀内くんが見事トップ4入賞!!引用:MTG公式サイト
これまで目立った実績はなかったものの、プレイの上手さに定評のあった彼なので、今回のブレイクも納得ですね。
やはりマジックは上手い奴が勝つゲーム!おめでとう!!ということで今回の記事では、プロツアーの調整過程と簡易レポートをお届けしたいと思います。
目次
▪️★調整メンバーについて
▪️★モダンの調整過程とチーム内の選択
▪️★使用したリストの解説
▪️★ドラフトについて
▪️★本戦の結果
▪️■終わりに
★調整メンバーについて
前回から継続or過去に参加経験あるメンバーが大半のなか、新規メンバーとして参加していただいたのが
平林さん&黒田さん。大先輩の方々がPT戦線に復帰&一緒に調整できるのは非常に嬉しい&楽しかったです。若い層も良いですが、
おじさんが強いのは嬉しい!★モダンの調整過程とチーム内の選択
今回は直前に『マーベル|スパイダーマン』が発売されたとはいえ、その影響力は極小。
なので『久遠の終端』追加後と考えると
2ヶ月近い準備期間がありました。これほど長い期間同一フォーマットを練習できるのは極めて稀です。
チーム調整の本格稼働は9月入ってからでしたが、僕は自身のスタイル=
「色々回してあらゆるデッキを理解したい派」に合わせて、7月末頃から様々なデッキを回して、デッキの強さや自身のプレイとフィットするかどうかを吟味していきました。
練習期間を通して僕が全く触らなかったのは、見た目から全く惹かれなかった&対戦してて強さを感じなかったドメインズーと、習得コストと強さのバランスが悪いと感じたアミュレットぐらいでしょうか。
ボロスエネルギー
Magic Onlineで安定した成績を残していた、モダンを代表するデッキのひとつ。
ですが現在のモダンでは意識される側であり、ネオブランドやリビングエンドのように明確な不利なデッキは存在するものの、
明確に有利なデッキは思い当たらないという状態であることは否めません。PTでも上位メタではあるものの、チームデッキとして選択するチームは少ないだろうという想定でした。
チーム内で最終的に選んだのは、最初からほぼ決め打ちだった松浦のみ。
ベルチャー
モダンでも屈指の安定性を誇るコントロール・コンボ。
ですがその分アンタップインの回数が限られますし、ライフ管理/手札管理などが難しく、
PTレベルで戦うとなるとかなりの練度を要求してくるのがネック。想定通りPTでも上位メタでした。
チーム内では、最初からエキスパートとして君臨していた小原を中心に、行弘、井上、平林、平見の5名が選択。
エルドラージトロン
こちらもトップメタと目されていたデッキの一つ。
最大値こそ高いですが、デッキ構築/プレイ共に幅が狭く、
サイド後の勝率が安定しません。《虚空の鏡》のようなキラーカードが直前で流行りだしたのものマイナス。
チーム内での選択は0名。
エスパーブリンク
『久遠の終端』のパワーカード・
《量子の謎かけ屋》で明確に強化されたものの、
当初想定された上位メタ(エネルギー・ベルチャー・エルドラージトロン)に対して特別強いわけではなく、最初はお熱だったチームメイトたちもドンドン他のデッキに移っていきました。
チーム内では、ブリンクデッキのマスターである増門のみが選択。
エスパー御霊
こちらも
《量子の謎かけ屋》で強化。エスパーブリンクと同じような構造をしつつ、コンボを搭載していて色々な角度から勝てるモダンっぽいデッキ。
ですがチーム内の評価はイマイチ。理由としてはとにかくブレる。
《超能力蛙》を毎回引いていれば話は早いですが、そうでないときはチグハグな手札だったりピッチだらけの手札だったりで、どうにも勝率が安定しません。
多くのメンバーが興味を持って触りましたが、最終的には0人。
グリクシスリアニメイト
Magic Onlineで地味に勝っていたデッキ。エスパー御霊と違って
《否定の力》のようなピッチでの妨害が搭載されていないのでリアニメイト=Winではなく、かなりフェアよりなゲームをすることも多いですが、ドローやリアニメイト呪文が多いので
エスパー御霊より再現性が高いのが魅力。
他のデッキと悩みつつも、調整初期から熱心にチューニングをし続けた原根のみが選択。
ネオブランド
コンボデッキの候補として常に頭の片隅に置いていましたが、やはり青いデッキを乗り越えるのは至難。
しまいには《苛立たしいガラクタ》がチーム内で評価され出したこともあり、完全に向かい風になり、見限ることにしました。ストーム
「ポジションだけは悪くない」「メタられてない」「経験がある」と理由をつけて少し回しては、デッキパワーの低さに愕然しての繰り返し。
僕以外の誰一人興味を持つこともなく、僕自身もちょっと回して断念しました。残念ながらベルチャーやネオブランドの下位互換。
バントジャッカル
『スパイダーマン』のカードを使った新デッキとして、行弘が生み出したデッキ。一時はチームデッキの候補として俎上に上がったものの、途中で
《天才遺伝学者、ジャッカル》と《マネドリ》の相互作用のルール誤りが発覚(※)。
デッキ自体が崩れたわけではないですが、弱体化したことは明白だったこともあり、行弘本人も諦めたことにより消えていきました。残念。
赤緑エルドラージランプ
チーム内で最後に浮上したメタデッキ。
「ボロスエネルギー・ベルチャー・エルドラージトロンの3つに五分以上に戦える」ということで僕を中心にテスト。
ですが、回せば回すほどデッキの粗が目立つようになり徐々に離脱し、最後は僕一人だけに。
調整最終日(=火曜日)にチーム外ではありますが実力者である
増田くんにデッキリストを渡して数リーグプレイしてもらい、
「有利なデッキは少ない、不利なデッキは多い、デッキパワーは並。」と冷静な判断をしてもらったので僕も完全に撤退。当初の想定通りrizer親和に合流しました。
親和
『久遠の終端』の新戦力・
《ピナクルの特使》で大幅強化。
《ピナクルの特使》でアーティファクトカウントが稼げるようになったので、レガシー級である
《河童の砲手》がプレイできるようになり、
一気にデッキパワーが跳ね上がりました。初期から調整していた森山・石村に加えて黒田、そして直前に中村と井川が使用をすることに決め、最終的にはベルチャーに並んでチーム最多の5名が選択。
なおデッキリストを5名全員で統一したベルチャーと異なり、親和は
森山バージョンと
石村バージョンでデッキリストが分かれており、森山黒田チームと石村中村井川チームで二分することとなりました。
前者が《湖に潜む者、エムリー》型、後者が《武器製造》型です。★使用したリストの解説
ということで、今回のデッキリストはこちら。
最終的に
石村"rizer"信太朗がデザインしたこの形の親和を選択しましたが、調整段階で僕自身もかなりのマッチ数、色々な形の親和を回しました。
様々なリストを回して思ったのは、
まず《河童の砲手》というカードが異常に強いこと。もちろん
《ウルザの物語》も強いですがサイド後は少し不安定なマッチも。それに比べると
《河童の砲手》は基本的に出ると対処手段が非常に少ない上に勝つまでのターンが短く、あっという間に蹂躙してくれます。
そして、
とにかくブン回りが強いこと。実質1キルみたいな盤面を構築することは珍しくなく、多少の相性差や妨害を意に介さず粉砕してくれます。
これは様々なデッキが存在しているモダンという環境において、明確な強みと言えます。ただし問題点もありました。一つは《羽ばたき飛行機械》《メムナイト》といった0マナクリーチャーが余りにも弱い点です。《河童の砲手》を早期にプレイするには
「軽量アーティファクトが少なくとも4枚+土地2枚」が必要。
《ピナクルの特使》や
《バネ葉の太鼓》などもあるので多少必要なのは理解できますが、
《信号の邪魔者》《電結の荒廃者》がない今、これらの引き過ぎは単純に勝率の低下に繋がります。
この問題を緩和するために
《頭蓋囲い》が入ったリストも回しましたが、こちらは単純に重い&サイド後脆いで没。
もう一つはマリガン耐性が低いことです。《河童の砲手》や
《思考の監視者》を出すには相応のアーティファクト数が必要であり、当然マリガンをすれば展開できるアーティファクト数は減ります。
1枚が2枚分になる
《ピナクルの特使》が毎回初手にあれば良いですが当然そんなわけもないので、1マナ域連打だけで勝てるエネルギー、土地3枚から7マナ出せるエルドラージトロン、少ないリソースで1ショットキルできるベルチャーなどに比べればマリガンへの耐性は明確に低いと言えるでしょう。
これらの2点を改善しようと試みていたのが、rizer作の《武器製造》親和でした。武器製造親和 中期型 by rizer
まず、《羽ばたき飛行機械》《メムナイト》といった弱いクリーチャーを排し、《仕組まれた爆薬》《ギックスのかぎ爪》《トーモッドの墓所》に置き換わっています。前者2つは
《武器製造》の「弾薬」トークンを活用するのに役立ちますし、
《トーモッドの墓所》は様々なマッチアップで活躍してくれます。特に
《トーモッドの墓所》の複数枚メイン採用が素晴らしく、ベルチャーや御霊といったデッキへの相性が明確に改善されました。
そして
《武器製造》がアーティファクトカウントを稼いでくれるので、
《ピナクルの特使》の依存度を下げ、デッキの安定感を高めてくれました。主軸ではなく、
5枚目以降の《ピナクルの特使》といったポジションです。
この形をベースに、チーム内練習のフィードバックを踏まえて微調整したものが最終形となります。
「0マナクリーチャーは弱い」という発想から抜けていた
《メムナイト》ですが、ボロスエネルギーやドメインズーが使う
《敏捷なこそ泥、ラガバン》へのブロッカーとしての役割が意外と重要なことが分かったので、追加の
《バネ葉の太鼓》と一緒にスタメン復帰。
《トーモッドの墓所》《仕組まれた爆薬》《ギックスのかぎ爪》はどれも複数枚引きたくなかったので、こういったカードを333みたいに散らしてバランスを取るのはいつも通りの井川流微調整といえるでしょう。
初手にはマナソースが必要ですが、追加の土地はほとんど必要ないデッキ、それが親和です。
その特性を活かして《朦朧への没入》をフル投入したのはさすがrizer。構造上相手への妨害枠を最低限しか割けないのですが、
《朦朧への没入》のおかげでピンポイントで対応できるようになり、対応力が上がりました。
もちろんボロスエネルギーとマッチアップした際には3点が痛く感じますが、各種カウンターでも対処できない天敵:
《至高の評決》を戻したり、
《否定の力》のコストにしたりと調整初期から大活躍でした。
こちらは森山くんが調整していた形からの流用です。除去が少ないマッチや、
《空の怒り》で捌いてくる相手にサイドインします。
PT本戦では、相手の《空の怒り》に対してこの《湖に潜む者、エムリー》でリカバリーをして、《河童の砲手》まで繋げて勝利!主にミラー対策。前日まで
《ハーキルの召還術》でしたが、草の根大会に出場した黒田さんが友人から教えてもらい、採用に至りました。
チーム内で
親和やベルチャー、ネオブランド対策として《苛立たしいガラクタ》の評価が高かった=他のチームも使ってくるだろうと考えていたので、その
《苛立たしいガラクタ》に対する回答としてもサイドインできる、良いカードです。
このカードの発見により、親和を使うことへの不安が払拭されました。★ドラフトについて
いつものプロツアーはリリース後1-2週間という短期間で仕上げる必要がある都合上、チームで調整しているプレイヤーや、元々地力の高いプレイヤーにとって有利な条件でした。
ですが今回のプロツアーは
『久遠の終端』発売から2ヶ月弱も経過しており、参加者全員が十分な練習をしている状態であるため差が付きづらく、苦戦するだろうことは最初から想定していました。
その想定通り、いや想像以上に僕はこの環境が苦手でした。MTGアリーナにて圧倒的大敗を記録。特に9月に入ってからは連敗に連敗を重ね、プラチナ4を定位置とする日々が続きました。
※9月はプラチナ4で始まり、プラチナ1で終わりました。これが現実。
幸いなことにリアルドラフト練習やMOドラフトではそこまで調子が悪いわけではなく、またPT直前にある程度持ち直したのもあり、最終的にはある程度自分の中で戦略を定めて挑みましたが、
過去イチレベルで自信がなかったので祈るようにドラフトポッドに着席したのでした。★本戦の結果
◎Day1
・1stドラフト初手はこの2択。そしてこれが最大の分岐点でした。基本的にはレアである
《強靭形態の調和者》のほうが強く、練習でもピックしてきました。今見ても断然
《強靭形態の調和者》だと思います。
ですが
直近のドラフト練習では緑の手応えがすこぶる悪かった&白の手応えが良かったこともあり、長考の末にカードの強弱ではなく色の好き嫌いで
《レイブレードの強兵》をピック。
長い経験から、こういうピックは良くない、選り好みはせず素直にやるべきだと何度も学んできたはずなのに。渋いパックが続き、大したことないカードをピックしつつ2パック目にレアを望むと。。。。
《強靭形態の調和者》と相性も良い、強レアです。ですが緑をピックをしていない僕には取ることができず。完全に自業自得です。3パック目もめぼしいレアを引けるわけでも流れてくるわけでもなく、自分の愚かさを呪いながらピック。最終的にはめちゃくちゃ地味なデッキが仕上がりました。10人卓=パック数が多いためデッキの平均レベルが高いため、0-3も覚悟です。
R1 黒緑 ××
R2 白青 ×◯×
R3 赤緑t青 ◯◯
R2で上家の
Christian Calcanoが白青だと発覚したときに、最初の2択がいかに間違っていたかを再確認。
彼はドラフトではテンポデッキを好んでおり、『久遠の終端』ではまさに白青がそれに当てはまります。上家のプレイヤーが友人だというのに、そんなことも思い当たらなかった自分の視野の狭さ、心の弱さにガッカリしたものです。
前PTから数えて、実に6連敗。自身の弱さに心底嫌気がしたものの、なんとかR3を勝利して1-2。
最悪の結果を回避できて心底ホッとしました。
・モダンR4 ベルチャー ×◯×
R5 ボロスエネルギー ◯◯
R6 エルドラージランプ ◯××
R7 ボロスエネルギー ◯×◯
R8 エスパー御霊 ◯◯
モダンは3-2でなんとか初日突破!有利マッチを2つ落として2-4になった時は落ち込みましたが、その後は引きに恵まれ、なんとか崖っぷちで生き残ることができました。
トータル4-4で2日目へ。目標は9-7なので、翌日は5-3以上のスコアが求められます。
◎Day2
・2ndドラフト初手は黒が濃いめのパックから、一番強い
《疑わしい珍味》をピック。
2手目で
《時系列の選別者》、3手目で
《輝きたる者、ヴォンダム卿》が取れたこともあり、
一番やりたかったアーキタイプである白黒に一直線です。一周後に
《大群の淘汰者》が取れたりと、ポジションも悪くなさそうです。
2-1では《高エントロピー巡洋戦艦》がこんにちは。17landsの指標ではあまり高くないレアですが、ドラフト練習会ではこのカードが何度も無双しており、チーム内で評価の高かった1枚です。1パック目後半で拾っていた
《虚空間刃の増強者》で「配備」しやすいのもあり、迷わずピック。
その後2枚目の
《時系列の選別者》や
《大反目者の魔除け》も取れたので、引き続き黒濃いめの白黒でピックしてきます。
3-1は
《サンスターの領土拡張論者》と悩みつつも
《払拭の光》から。
オープニングパックにあった
《乱脈な気孔》が一周して帰って来る幸運もあり、最終的にはそこそこ良いデッキになりました。
9人ドラフトなので当たり運に大きく左右されますが、これなら2-1から3-0が期待できそうです。
R9 白青 ×◯×
R10 白緑t赤 ×◯◯
R11 赤黒 ◯◯
2-1!初戦こそ相手の3連打
青アンコモン(《イルヴォイの潜入者》《ウスロスのサイオニシスト》《コード破りの猟犬》)に屈するも、その後はテンポよく展開しつつ除去を打つ、理想的な展開で勝つことができました。
6-5で折り返し。3-2目標で最後のモダンラウンドに臨みます。
・モダンR12 ボロスエネルギー ◯◯
R13 ベルチャー ◯◯
R14 ベルチャー ◯×◯
R15 エスパー御霊 ×◯◯
R16 ネオブランド ××
4-1!トータル10-6で目標達成=次回プロツアーの権利獲得です!!2日通して先攻が多く、有利マッチによく当たり、ドローに恵まれる。完全なるラッキーボーイではありましたが、今回はデッキ選択も良かったかなと思います。
チーム内で親和を選んだメンバーは中村7-3、井川7-3、黒田6-4、森山5-4(+被トス1)、石村4-5(+与トス1)と勝率60%強!
群雄割拠なモダンということを考えると大成功といっても過言ではないでしょう。■終わりに
今シーズンの3プロツアーを終えて、なんとかまた来年に繋げることができました。
・PT霊気走破
構築5-5 ドラフト5-1 トータル10-6 チェイン
・PTファイナルファンタジー
構築0-3 ドラフト1-2 トータル1-5 初日落ち
・PT久遠の終端
構築7-3 ドラフト3-3 トータル10-6 チェイン
こうして見ると、昨シーズンの「優勝→初日落ち→トップ8」ほどではありませんが、
好不調の波が激しいことが分かります。「運が良い時は勝つ、運が良い時は負ける」だけの男とも言えます。
もちろん勝ち切ることも重要ではありますが、プロツアーに出続けるには安定した成績・実力が求められており、この頻度で初日落ちしていてはまたすぐに脱落すること間違いなし。少なくとも上記の成績ではAMPでは世界選手権に出場はできておらず、一流プレイヤーからは程遠いです。もう少し地に足つけて、安定した成績を残せるよう精進します。
次回のプレミアイベントは12月の世界選手権。昨年凡ミスで取り逃した栄光を今度こそ掴めるよう、引き続き頑張っていきたいと思います。
それでは今回の記事はここまで。また次回の記事でお会いしましょう!