・はじめに本記事は先日投稿した「
全国大会使用デッキ、【水闇自然DOOM】ができるまで」の続編となる。
今回はオリジナルについての話で、昨今の【水闇自然マルル】には
《偽りの月インターステラ》が採用されない傾向が強まってきていると思うが、
筆者が3月末に参加した「全国大会2024」でも既に同様のアプローチで調整していた。当時の競技シーンではまだ
《偽りの月インターステラ》入りが主流だったが、
雑多なデッキに対する圧倒的なパワーと引き換えに、【ファイアーバード】や【ドリームメイト】、【ジャイアント】といったTier1への勝率を落としてしまう点は看過できなかった。【水闇自然マルル】は依然として現役で、他Tier1と比べてもプレイ難易度は若干低いと言っていいだろう。
来たる「DMGP2025-1st オリジナル」でも十分オススメできるデッキとなっている。本記事では当時の基盤ができるまでの思考を振り返りながら、何故【水闇自然マルル】から
《偽りの月インターステラ》が抜けて現在の基盤が主流となっているのか、そして今現在使うのであればどんな基盤がオススメできるかについてお話ししていきたい。
目次
▪️鳥は最強だ
▪️インターステラ型の脆弱性
▪️ハンデス型マルル、ハンデス抜きで
▪️鳥に五分なら上等
▪️その他の配分について
▪️今使うならこのリスト
▪️おわりに
鳥は最強だ
鳥は最強だ。全国大会前のデュエチューブリーグ後期最終節リーダー戦、筆者とdotto選手がチームの命運をかけて迷いなく使用したように、
当時一番勝ちに近いデッキは間違いなく【ファイアーバード】だった。「デュエチューブリーグでは全国大会の候補デッキを使いにくいないなぁ」なんて考えたりもしていたが、杞憂も杞憂だった。
【ファイアーバード】は最強であるため、わざわざ隠すまでもなく全国大会参加者全員が強いことに気付くし、使うか向き合うかという二択だけが分かりやすく与えられる。
だからこそ、チーム優勝のワンチャンスに賭けて堂々と持ち込んだ。【ペテンシーフシギバース】のような地雷デッキをいきなり持ち込むのとは訳が違う。
明確に最強。故に、【ファイアーバード】に負け越すデッキはそれだけで足切りとなり得る。これが調整のスタート地点だった。
インターステラ型の脆弱性
となればまずは【ファイアーバード】にありったけの環境デッキをぶつけて検証していくこととなる。
そんな中で2種の【水闇自然マルル】を試すことになるのだが、それぞれのリストがこちら。
ガイアッシュ型水闇自然マルル
インターステラ型水闇自然マルル
前者は旧殿堂で主流だった
《ブレイン・スラッシュ》を起点にリソースを稼ぎつつ大型フィニッシャーを投げ続けて堅実に制圧していくタイプで、後者は
《偽りの月インターステラ》登場で手に入れた圧倒的な火力や、シールドの
《ブレイン・スラッシュ》からの切り返しに特化したタイプだ。
結論、どちらも【ファイアーバード】にボコボコにされた。どちらも
《ハッター・ルピア》の高速火力に屈し、特に後手に関しては話にならなかった。
《ブレイン・スラッシュ》というギミック自体が
《ポッピ・冠・ラッキー》1枚で咎められ、
《ブレイン・スラッシュ》の性質上
《アリスの突撃インタビュー》による盤面の
《天災デドダム》処理にも弱く、シールドで切り返せる展開がほぼ存在しない。
やっとの思いで
《流星のガイアッシュ・カイザー》や
《飛翔龍5000VT》を着地させても
《凰翔竜機マーチ・ルピア》や
《龍后凰翔クイーン・ルピア》を処理しきれずに押し込まれたりと、それはもう散々な結果となった。
しかし、【水闇自然マルル】自体の安定感や、
《流星のガイアッシュ・カイザー》と
《飛翔龍5000VT》を4枚ずつ採用できる点は高評価だった。
具体的には、
次点の仮想敵に挙げられる【ドリームメイト】や【ジャイアント】に対して、切り返しのカードをここまでしっかり採用できると明確に勝ち越せることを再確認できたのだ。派手にシールドを殴るような展開も少なく、
《終末の監視者ジ・ウォッチ》や
《終末縫合王ザ=キラー・キーナリー》のように安全なフィニッシャーも搭載できるため、
予期せぬ雑多デッキへの耐性も高い。総じて
「デッキはかなり強いけど肝心の【ファイアーバード】に勝たない!」という結論から今にも没になりそうだったところで、直近【ファイアーバード】ばかり使っていた自分が、
CSで踏むたびに困らされていたあるカードを思い返した。
《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》だ。ハンデス型マルル、ハンデス抜きで
新殿堂の【ファイアーバード】は《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》があまりにも踏めない。逆に言えば、今まではもっと踏めた。《雷炎翔鎧バルピアレスク》が存在していたからだ。これまでの【ファイアーバード】であれば
《雷炎翔鎧バルピアレスク》の1点さえ通れば、そこでEXターンを獲得することで残りのシールドのS・トリガーを比較的ローリスクで踏むことが容易だった。
EXターンさえあれば
《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》の2体バウンスもなんのその。続くターンに出し直せば関係ない。
仮に
《雷炎翔鎧バルピアレスク》の1点で踏んだとしても、
《アリス・ルピア》の展開も込みでヘイトが分散しているパターンが多く、なんとかなりやすかった。
しかしながら、その《雷炎翔鎧バルピアレスク》がほぼ絡まないとなると話は大きく変わってくる。出力は
《龍后凰翔クイーン・ルピア》と
《アリス・ルピア》に依存するようになり、それでも横の火力は十分出るのだが、EXターンがない関係上
どこで《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》を踏んでもそのターンの攻撃が止まってしまうのだ。しかもこの
《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》に関しては、
《アシステスト・インコッピ》のウルトラ・セイバーでも効率良くケアができない。
《ブルー・インパルス/「真実を見極めよ、ジョニー!」》等の同時バウンスとは異なり1体ずつ別々にバウンス処理が行われるため、まずは
《アシステスト・インコッピ》をバウンスし、その後に
《龍后凰翔クイーン・ルピア》をバウンスする、といった処理をされるとひとたまりもないからだ。
受けとしての
《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》のバリューが相対的に非常に高くなっていることに比較的早い段階で気付けていたのが大きかった。
これを【水闇自然マルル】に流用できたら、少なくとも《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》がシールドに埋まっている試合は勝ちに持っていけないだろうか。しかしながら
そういった構築には前例がなかった。《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》を採用する構築はセットで
《絶望と反魂と滅殺の決断》も採用され、ある意味
《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》を強く使うための基盤が一般的だったのだが、今向き合おうとしているメタゲームでは
《流星のガイアッシュ・カイザー》も減らせないし、
《飛翔龍5000VT》も減らせない。
【光水天門】や【ジャイアント】、その他読み切れない雑多のデッキを考慮すると、
《ロスト・Re:ソウル》や
《悪魔龍ダークマスターズ》のような大型ハンデスも採用したく、そうなると枠が足りない。
結果、上面は最悪オマケで良いからと、それでも《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》を4枚ねじ込んだ【水闇自然マルル】を試すこととした。《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》→
《絶望と反魂と滅殺の決断》のような綺麗なマナカーブはなく、シナジーがあるとすれば
《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》を2連続でプレイできるような展開に限定されるだろうが、その分【水闇自然マルル】本来のマナカーブをしっかり再現できるよう
《ティンパニ=シンバリー》の枚数等を妥協しなければ、成立するかもしれない。
鳥に五分なら上等
結果として、鳥に勝ち越すとまではいかずとも、両者最適なプレイをした上で五分以上の勝率を確認できた。実際に全国大会当日持ち込んだリストがこちら。
フミシュナ型水闇自然マルル
本当にシンプルな【水闇自然マルル】に
《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》だけ採用した形となる。
自分から先手で
《ヨビニオン・マルル》を押し付けるゲームに加え、
今まで取りこぼしていた殴られるゲームに対して、《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》採用により確率にして43%も明確なリスクを付けられるようになった。こちらからの制圧をチラつかせることで早期に殴らせ、そこに対して
《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》で
《ハッター・ルピア》や
《龍后凰翔クイーン・ルピア》を処理し、それぞれ4投された
《流星のガイアッシュ・カイザー》と
《飛翔龍5000VT》で切り返す。
一応
《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》がゲーム進行に絡むパターンも明確に存在して、例えば先攻3ターン目の
《マジシャン・ルピア》の返しなんかに投げれば、
《ハッター・ルピア》をハンデスで落とし得るし、腐ってもブロッカーかつ
《飛翔龍5000VT》の軽減となるため、
《ヨビニオン・マルル》が引けないときの事故緩和要員としても一定の主張はできた。運良く2連続でプレイできるとリソースゲームが崩壊する。
とはいえやはり
《絶望と反魂と滅殺の決断》まで採用していたころほど強く使えているという感じはしない。あくまで「最悪これで1ターン分お茶を濁せるよね」くらいの感覚で、グッドスタッフ的な体感だった。
ここまでやってようやく五分。
しかし五分で上等。何故なら【ファイアーバード】の同型戦も、突き詰めると当然五分だからだ。これは全国大会2023でも同じ手法を取っていて、当時Tier1の【闇自然アビス】に対して、明確に五分の勝率を出した【水魔導具】を持ち込んだ考え方と共通している(【闇自然アビス】側が対【水魔導具】のプレイを熟知していなければ、【水魔導具】が有利ではあった)。
「メタる」というのは必ずしも大きく勝ち越す必要はないと考えていて、
最低限五分以上あれば「同型戦をやるよりマシ」という主張が可能となる。結果的にその他の対面、今回で言うと【ドリームメイト】や【ジャイアント】、その他予期せぬ、少なくとも【ファイアーバード】にヘイトを向けてくるであろう雑多なデッキに対してより勝率を出せる【水闇自然マルル】に優位性があると考えたのだ。
こういった考え方もあるということは、本記事を通して共有しておきたいことの一つだ。
割り切り方の一つとして、応用できるパターンは存在するはずだ。その他の配分について
初動枠
4 x 《フェアリー・Re:ライフ》
4 x 《フェアリー・ライフ》
2 x 《地龍神の魔陣》
1 x 《フェアリー・ギフト》
2コストからの初動が絶対とされる都合上、10枚以上の採用が良いとされている。また、このデッキは3ターン目に
《天災デドダム》→2コストブーストのようなくっつきを意識した動きを行うことも多く、少し多めに採用するくらいが丁度良いだろう(
それでも当日引けずに負けてしまったことは本当に悔やまれるが、この手のデッキの宿命ともいえる)。
9~10枚目にあたる
《地龍神の魔陣》については【ファイアーバード】へのG・ストライクによる切り返しをより強く意識した結果となるが、
《配球の超人/記録的剛球》を採用して単色率を上げることでデッキ自体の事故率は軽減できる。とはいえ
《地龍神の魔陣》のサーチ効果がロングゲームで輝くシーンも多く、ここは選択枠となるだろう。
《フェアリー・ギフト》については初動の10.5枚目という体感で、
《ヨビニオン・マルル》や
《ティンパニ=シンバリー》を2ターン目にプレイして無理矢理初動換算できる他、道中
《飛翔龍5000VT》や
《流星のガイアッシュ・カイザー》を早出ししてゲームレンジをずらす強力な動きが存在するため採用した。
しかしその反面、
一定の確率で「意外と上手く噛み合わないストレス」も発生するカードなので、確定枠とまではいかないだろう。ここは回していくうちに体感できる部分だと思う。
デドダム・ヨビニオン枠
4 x 《天災デドダム》
4 x 《ヨビニオン・マルル》
2 x 《ティンパニ=シンバリー》
3ターン目は基本的に
《天災デドダム》をプレイしたく、さらにこの時点で6マナまで延ばせると続くターンの
《CRYMAXジャオウガ》や
《ロスト・Re:ソウル》が狙え、
《流星のガイアッシュ・カイザー》も
《ハッター・ルピア》のメタ圏外に逃がすことができる。
《ティンパニ=シンバリー》に関しては、特に先手であれば
《マジシャン・ルピア》や
《ルピア&ガ:ナテハ》、
《配膳犬のトレス》や
《終末縫合王ザ=キラー・キーナリー》といった起点となるクリーチャーを除去してテンポを獲得することにより、実質1ターン分のアドバンテージを獲得することができる。
2コストブースト総数10.5本に加え、3ターン目のアクションもこの10本+
《修羅の死神フミシュナ/「この先は修羅の道ぞ」》といった具合で、
とにかくこの3ターン目までに淀みなく動けるよう枠を多く割いている。フィニッシャー枠
2 x 《CRYMAXジャオウガ》
2 x 《終末の監視者ジ・ウォッチ》
2 x 《ロスト・Re:ソウル》
1 x 《九番龍ジゴクバンカーPar459》
《CRYMAX ジャオウガ》と
《ロスト・Re:ソウル》の配分についてだが、諸々の必要なカードを積んでいった際に余るのがこの4枠となる。
体感として
《CRYMAX ジャオウガ》で詰めきりたい局面と、逆にリスクを追わずに
《ロスト・Re:ソウル》で長期戦に持ち込みたい局面は50:50で、2枚ずつの採用が一番しっくり来ている。
《CRYMAX ジャオウガ》は基本的に最終手段であり、そう積極的に投げる必要があるほど前のめりなメタゲームでもなく、
《ロスト・Re:ソウル》もまた【光水天門】のような対面に対しては明確に必要な一方で、そもそも撃たせてもらえるタイミングがないこともあるカードで、3枚以上入れたいとは思わなかった。
《終末の監視者 ジ・ウォッチ》については、最初期の構築から
《終末縫合王ザ=キラー・キーナリー》を抜いて2枚採用する形となっている。
現在は【ペテンシーフシギバース】等の厄介なcipを咎めたいのでできれば散らしたいが、特に【ジャイアント】には
《流星のガイアッシュ・カイザー》と
《終末の監視者 ジ・ウォッチ》1枚でゲームエンドまで持ち込むことができたため2枚採用とした。
序盤は積極的にマナに置かれることが多く、
《九番龍ジゴクバンカーPar459》とあわせて合計2.5枚採用という感覚が最も回しやすいと思う。
《九番龍ジゴクバンカーPar459》は
中盤のフィニッシャー回収に限らず、あらゆるカードを+0.5枚してくれるような感覚だ。マナが伸びたり
《流星のガイアッシュ・カイザー》がいれば大抵は実質0コストで使うことができるため、器用に立ち回りやすい。
今使うならこのリスト
水闇自然マルル最新版
先程紹介したリストから大きく基盤を変えたわけではないが、
【ペテンシーフシギバース】に対して《終末の監視者 ジ・ウォッチ》が《プリンセス・パーティ〜シラハの絆〜》や《真気楼と誠偽感の決断》で簡単に処理されてしまうため、場持ちの良い
《終末縫合王ザ=キラー・キーナリー》を優先しつつ、総数自体を増やしたアプローチとなる。
《終末縫合王ザ=キラー・キーナリー》で
《大樹王ギガンディダノス》を処理できると、追加効果で墓地から全てのクリーチャーを蘇生できる点も優秀だ。
それに伴い、増えた分の多色は
《地龍神の魔陣》を
《配球の超人/記録的剛球》にすることで全体のバランスを取っている。
《フェアリー・ギフト》は枠の都合で見送る形となったが、足回りの総数自体は十分に取れているので大きく問題はない。
GP等でデッキに迷っている方は是非参考にしてみて欲しい。非常にバランスの良い基盤だと思う。
おわりに
惜しくも予選落ちとなってしまったが、当日の結果と照らし合わせても、アプローチ自体に後悔はない。
…後悔がなかったところでだから何だという話で、別に結果は覆らないためまたの機会にリベンジしたい。筆者が健康で変わらずデュエルマスターズを好きでいる限りは、機会はいくらでもあるだろう。
【水闇自然マルル】というデッキは先手の
《ヨビニオン・マルル》以外には決定的な上振れムーブがなく、後手を捲る力もやや乏しいため、その性質だけは理解して使う必要がある。【ファイアーバード】や【ドリームメイト】のそれと比べると、上振れに屈しやすい側であり、どうしてもお利口さん感が強いのは間違いない。
その分プレイ方針は分かりやすく、細かいミスも起きにくいため、是非触ってみて欲しい。ZweiLance