・はじめに先月末、デュエルマスターズの全国大会に出場し、結果は予選落ちとなった。
応援してくれた皆様には、期待に応えられず大変申し訳ない。
本記事の内容は勝って嬉々として語りたかったのだが、残念ながらそれは叶わなかったため、
正直書くか迷ったし、思いの外「悔しさ」が大きく最初は筆も進まなかった。暫く経ってようやく気持ちの整理が付いてきたので、ここに記録として残すこととする。
前編では最も苦悩したアドバンスフォーマットについて、後編ではオリジナルフォーマットについてお話していく。
本記事が今後全国大会に臨むプレイヤーの、また未来の自分へのヒントになれば幸いだ。目次
▪️「足切り」を恐れて
▪️【闇自然アビス】の幻影
▪️XENARCHが強過ぎる
▪️神様、仏様、dotto様
▪️XENARCHが強過ぎる(再)
▪️システムもデッキも要件から逆算して考える
▪️上手さを逆手に
▪️おわりに
「足切り」を恐れて
全国大会は予選がアドバンスフォーマットで1~3回戦に加え、オリジナルフォーマットで4~6回戦、本戦はオリジナルフォーマット3回戦によって行われる。
最終的に全国大会優勝を決定付けるのがオリジナルフォーマットなのは間違いない。しかしスイスドローのルール上、
アドバンスフォーマットの時点で「足切り」が存在する。具体的には最低でも2-1以上、もっと言えば本戦での順位先攻ルールまで見越して3-0の戦績が求められる
(詳細な計算方法はここでは割愛する)。
逆に万が一にも1-2以下の成績を取ってしまった瞬間、
オリジナルフォーマットを準備してきた意味、戦う意味すら失われてしまう、非常に残酷なルールなのだ。この
「足切り」にならないよう、オリジナルフォーマットと同等以上に準備をする訳だが、
結論から言うとこのアドバンスフォーマットの調整に失敗した。最終的なデッキ選択に後悔がある訳ではないのだが、
「無い答え」を探すことにあまりにも多くの時間を費やしてしまったのだ。【闇自然アビス】の幻影
良くも悪くも昨年開催された『全国大会2023』アドバンスフォーマットの調整は上手くいき過ぎてしまった。割と早い段階から
【闇自然アビス】の《深淵の壊炉マーダン=ロウ》と《邪闘シス》の強さに目を付けることができ、調整を進めた結果この戦略がドハマリ。想定した通りのメタゲームに対して想定した通りの勝率で3-0の成績を収めた。
全国大会ともなれば「環境デッキ相手」に対しては皆が何十時間と練習してくる訳で、CSやGPのようにミスを拾えるパターンは極めて少ない。
そういった意識から外した戦略を取るのが上策と言え、
独自の開拓を進めて「こっちだけが全部知ってる」が理想だ。この成功体験から今年も同じようなアプローチができると望ましいと考え、
当然それを求めた。結果、難しかった。没案に何十時間も費やしてしまった。XENARCHが強過ぎる
全国大会では相手もまた「意識外のデッキ」を構想してくる訳だが、そうは言ってもストレートに環境デッキを最適化して持ち込んでくるプレイヤーが大半だ。
大前提として、
環境デッキが環境デッキたる所以はその「デッキパワー」で、非環境が非環境デッキたる所以は「たまたま気付かれていないか」あるいは大半が「デッキパワー不足」だ。後者を模索するよりも、前者をとことん突き詰めていく方が
「徒労」は減るし、
「大失敗」もない。逆に、
「大成功」も難しいとも考えている。
本大会のメタゲームとして想定していたのが
【闇単XENARCH】、【光水天門】、【ドリームメイト】、【BAKUONSOOO系】の主に4つ。
当たり前だが、こうもベクトルの違うデッキを全て同時に見るのは不可能だ。
【闇自然アビス】は「特定の対面を見る」というアプローチではなく、そもそもオリジナルフォーマットでTier1に君臨する程度のデッキパワーを持ち合わせていたため、「再現性」を高める方向性でアドバンス用に調整を進めると、対面を問わず勝率の上昇が期待できた。
しかし、今回のメタゲームではそんな生温いことは言ってられなかった。特に【闇単XENARCH】は特殊かつ強烈で、
いずれのデッキも特別な、いや露骨な対策を施さなければ安定した勝率が期待できない。【ガイアッシュ覇道】に
《流星のガイアッシュ・カイザー》と
《爆龍覇グレンリベット/「爆流秘術、暴龍の大地!」》を採用してみたが、【ドリームメイト】と【BAKUONSOOO系】に先に動きを通されて負けてしまった。
【モルトDREAM】に
《モモキング-旅丸-》や
《神聖龍エモーショナル・ハードコア》を採用してみた結果、【光水天門】に対して高い勝率を確認できたが、他対面への勝率とトレードオフとなり微妙な数字が出てしまった。
【BAKUONSOOO】に
《ダイキリ》や
《ポッピ・冠・ラッキー》を採用してロングゲームを試みたが、あらゆるデッキの先手の動きに対応できず「先手なら強い」デッキ止まりになってしまい、「先手想定ならそもそも【闇単XENARCH】とか【ドリームメイト】の押し付けで良い」みたいな話になってしまった。
この他にも無数の没案があり、
本当に毎日、一日中、色んなことをあんだんてさんと試しては、没になってを繰り返した。そうこうしているうちにも全国大会の当日が迫り、
不安がないと言えば嘘だった。神様、仏様、dotto様
結果的に筆者は【水闇自然DOOM】を使うことになるのだが、それは煮詰まり切った調整後の深夜、絶望の中で散歩中の、ふとした気付きからだった。
※ブツブツ言いながら深夜の都内を徘徊する不審者を見かけたらそれは当時の筆者なので申し訳ない結果を出している変なデッキで色々思い返してみたところ、
「そう言えばdottoさん、全国大会も見据えて地雷デッキ使ってたよな」と。
けみくろ放送局で1年前の動画を観返すと、
DMGP2024-1stで3位入賞を果たした【50枚水闇自然DOOM】が紹介されていた。当時のメタゲームは【水火マジック】や【光闇火ドルマゲドン】、【闇火バイク】等、今回のメタゲームとは大幅に異なりビートダウンやミッドレンジが強く、受け札もかなり厚く採用されているため適当ではない部分も多い。
何より50枚デッキの審議から始める必要があったのだが、パッと思い付いたのがこの要素だ。
《死神覇王ブラックXENARCH》の着地に対して《流星のガイアッシュ・カイザー》を当てて、ハンデスで増えた墓地と軽減を活かして《超神星DOOM・ドラゲリオン》を3~4t目に着地させたら、なんか勝ってそうじゃない?そう言えば最近出た《雷撃の冥将クーゼン/ダーク・ライフ》って、《ハニー=マーガニー/「こっちは甘いぞー」》より取ってるアドバンテージ凄くない?あれ?XENARCHが強過ぎる(再)
適性はあったが、誤算も多かった。まずは
図らずも【ドリームメイト】に極めて高い勝率を出したこと。相手の
《森夢のイザナイメイ様》に対して
《流星のガイアッシュ・カイザー》が当たり、そのまま
《超神星DOOM・ドラゲリオン》が着地してゲームが終わる。仮に
《キャディ・ビートル》を出されても、
《超神星DOOM・ドラゲリオン》を進化元ごとあえてマナに送ることで、増えたマナから地上戦を仕掛けて問題なく勝つことができた。
特に《雷撃の冥将クーゼン/ダーク・ライフ》が強力で、《時空の禁断レッドゾーンX》にP侵略させて相手のドリームメイトを破壊し続けるだけでかなりの時間を稼ぐことができた。【光水天門】、【BAKUONSOOO系】に対しては
《キャディ・ビートル》が非常に有効だった。
こと【水火BAKUONSOOO】に対してはその再現性とメタ突破力から
《終止の時計 ザ・ミュート》に頼らざるを得ない展開が頻発したが、【光水火BAKUONSOOO】に対しては
《キャディ・ビートル》を定着させながらゆっくり地上戦を仕掛けていけば、どこかで
《超神星DOOM・ドラゲリオン》が通る。
一方、
「これなら勝てるのでは?」と着想を得た肝心の【闇単XENARCH】にはと言うと、めちゃくちゃに負けた。ガン不利だった。まず
《死神覇王ブラックXENARCH》が着地する際、
《零龍》の「墓地の儀」のみを残されてしまうと、いくら
《流星のガイアッシュ・カイザー》と
《超神星DOOM・ドラゲリオン》でカウンターを試みようにも、
《超神星DOOM・ドラゲリオン》の「パワー-9000効果」が強制で誘発して、「墓地の儀」が達成されカウンターを許してしまう。「破壊の儀」でも同様で、
《復活の祈祷師ザビ・ミラ》の破壊効果に反応してしまう。
それだけなら
《∞龍ゲンムエンペラー》を踏み倒すというアプローチがあるため良かったものの、
なんと《緊縛の影バインド・シャドウ》1枚で《超神星DOOM・ドラゲリオン》がタップインしてしまい、【水闇自然DOOM】と悟られた瞬間に諸々が破綻してしまうのだ。これには正直馬鹿馬鹿しくて笑ってしまった。
加えて、
《流星のガイアッシュ・カイザー》をケアしてこちらのターン終了時に
《死神覇王ブラックXENARCH》が着地するようにゲームを進められるのも負けパターンだった。全国大会に【闇単XENARCH】を持ち込むプレイヤーなら、それくらいはできる。
結局、そもそものコンセプトで勝とうとしているはずが、《審秘の精霊ピュリファイ・ジョーカー》のような露骨なメタカードを採用させられる羽目に。【闇単XENARCH】は強過ぎる。この時点で、調整グループ内では「これも没」という雰囲気になり始めていたが、
多分方向性は間違っていなくてその手段が間違っていると感じたため、個人的にもう少しだけ抗ってみることにした。
システムもデッキも要件から逆算して考える
現状、対【闇単XENARCH】の課題はこうだ。①「墓地の儀」のみを残すゲーム進行に対して、《超神星DOOM・ドラゲリオン》の強制効果が裏目を作ってしまう。
②《緊縛の影バインド・シャドウ》がいると、《超神星DOOM・ドラゲリオン》の効果が使えない。
③こちらのターン終了時に《死神覇王ブラックXENARCH》を出されることによって、《流星のガイアッシュ・カイザー》をケアされてしまう上に、続くターンにリソースを全て奪われてしまう。
まず①について、「墓地の儀」を残され続ける限り
《超神星DOOM・ドラゲリオン》の強制効果とは必ず向き合わなければならない
この致命的な欠点について、
《∞龍ゲンムエンペラー》で解決することはできるのだが、そうすると②の要素が邪魔をする上に、そもそも多色でもあり積極的に多投したいカードではない。
その答えは至ってシンプルだった。5000VTだ。
考えた戦略は以下の通り。
①について、まず
《超神星DOOM・ドラゲリオン》パワー-9000効果で
《死神覇王ブラックXENARCH》を破壊しつつ、
《飛翔龍5000VT》を蘇生、その他相手のクリーチャーを全てバウンスする。
すると相手の盤面は更地となり、
「《零龍》を卍誕するならリーサルがないし、卍誕しないなら次のターンに《超神星DOOM・ドラゲリオン》を出し直す」という《∞龍ゲンムエンペラー》と同等な「詰み」の2択を迫ることができる。②についても道中で一度
《飛翔龍5000VT》を着地させて
《緊縛の影バインド・シャドウ》をバウンスすることで、
墓地に《飛翔龍5000VT》を用意しつつ前述の状況に持ち込むことができる。その際、
《死神覇王ブラックXENARCH》に触れず、返しのターンに
《零龍》卍誕からリーサルを組まれるパターンも存在したが、これは
《終止の時計 ザ・ミュート》でカウンターをすることができた。
さらにこのパターンは最終的に後述する
《とこしえの超人》採用によって受けの本数が8本となり、
確率にして70%超えのより強固なものとなった。こうした
《飛翔龍5000VT》の採用によって、二つの課題を同時にクリアすることができたところで、
問題は最後の③だ。③こちらのターン終了時に《死神覇王ブラックXENARCH》を出されることによって、《流星のガイアッシュ・カイザー》をケアされてしまう上に、続くターンにリソースを全て奪われてしまう。
こればかりはどうにもならなかった。既存の基盤から大きく変える糸口も見えず、あと一歩なのに。喉元まで来ている体感があるのに。
寝ても覚めても全国大会アドバンスフォーマットのことでいっぱいになりながら、最後の最後、
二日前にして”答え”に到達する。文字通り、深夜2時に寝ながら思いついた。
上手さを逆手に
考え付いた理論はこうだ。
いかんせん
《キャディ・ビートル》が自ターン限定のテキスト故に【闇単XENARCH】相手には全く刺さっておらず、こちらのターン終了時に
《死神覇王ブラックXENARCH》を着地させようとすることに、一切の裏目が発生していないのが問題だ。
であるならば、
その状況に強烈な裏目が発生するカードを入れることで、そもそも「正解」であったはずのプレイを「不正解」にできないか。そこで思い切って
《キャディ・ビートル》を誘発タイミングを問わない
《ベイBセガーレ》に差し替えてみると、
これが当たった。③こちらのターン終了時に《死神覇王ブラックXENARCH》を出されることによって、《流星のガイアッシュ・カイザー》をケアされてしまう上に、続くターンにリソースを全て奪われてしまう。
この一番されて嫌なプレイを狙われた結果、そこに《ベイBセガーレ》を添えることで《死神覇王ブラックXENARCH》は着地せず、結果的に相手は続くターンにそれを処理する他なく、本来こちらが狙っていたゲームプランが通る、という訳だ。
「手札の儀」を解決されない限り
《零龍》のリスクはなく、「手札の儀」の解決は
《流星のガイアッシュ・カイザー》誘発とイコールとなる。
【光水天門】や【BAKUONSOOO系】への勝率に若干のマイナスは見られたものの、1コストという小回りを評価できるシーンもあり、全体的にもあまり大きな打撃にはならなかった。
そして最後に、それ以上の仕事が見込める
《とこしえの超人》についての検討を行った結果、
想定するメタゲーム内で勝率を落としたのは【BAKUONSOOO系】のみであり、それ以外に関しては《ベイBセガーレ》より圧倒的に高い勝率を叩き出すことができた。その要因として、現在の【光水天門】は
《頂上接続ムザルミ=ブーゴ1st》に強く依存しており、これが
《とこしえの超人》たった1枚で止まり、ターンが返ってくる。中途半端に
《真邪連結バウ・M・ロマイオン》あたりを踏み倒そうものなら、そこに
《流星のガイアッシュ・カイザー》が当たって即勝利、といった具合だ。
あとは相手が
《理想と平和の決断》で
《とこしえの超人》に構っている間に、
《アーテル・ゴルギーニ》と
《超神星DOOM・ドラゲリオン》の2枚を揃えれば良い。
唯一【BAKUONSOOO系】に関しては明確に「
《キャディ・ビートル》の方が良い」ことが多かったのだが、
最終的には一番強いデッキ【闇単XENARCH】と、それを選ぶプレイヤーが一定数いるという読みを信頼した結果となる。
前述した他にはない
「地味なG・ストライク」も、背中を押すきっかけとなった。
殴ってくるデッキにも、最悪43%
《終止の時計 ザ・ミュート》を踏ませれば問題ない。
そうして完成したリストがこちら。
おわりに
結果的に、【闇単XENARCH】や【光水天門】の使用者は極めて少なかった。どちらかと言うと、それらを強く意識した形でメタゲームが動いており、最大母数は恐らく【ドリームメイト】だった。
調整仲間であるあんだんてさんは
《ギガボルバ》を採用した【闇単XENARCH】を使用することになったが、
【水闇自然DOOM】はあくまでメタデッキだ。デッキは決して強くない。想定外のメタゲームに粉砕されるリスクは大いにある。お互いに納得した上で、最後は別の結論を選んだ。筆者が当日対戦した相手は【光水火BAKUONSOOO】に勝ち、【水闇自然ボウダンロウ】に負け、【光水闇マーシャルリペア】に勝ち。
恐れていた足切りは免れたが、恐らく練習の1/100も発揮していないだろう。つくづく難しい。
まあでも各々の強烈な想いが募ったたったの3試合、そういうものだろう。
年々複雑化しているようにも感じる、あまりにも特殊な舞台。故に焦がれる想いに嘘は付けないのだ。次回後編ではオリジナルについてお話していく。
オリジナルに関しては逆にストレートに結論付いた部分も多く、より戦術的な部分を深掘りしていくつもりだ。
ZweiLance