・はじめに「デュエルマスターズの歴代で最も強いデッキは何か?」と聞かれたら、競技シーンの最前線を追ってきた人間であれば《絶望神サガ》と即答することだろう。【サガループ】界隈外の人間ですら「ああ、あのデュエマの3マナのやつね(笑)」と知っている程のインパクトを残した伝説のデッキ。 筆者の一番好きなカードが使われた、一番好きなデッキだ。登場から殿堂入りに至るまで様々な構築が試され、最終的な結論としてユーザーが辿り着いたのが、
とりわけ今でもファンが多く本当の意味で最強と名高い【水闇晩餐サガループ】。 本記事ではそんな最強の【サガループ】が、
最強の中の最強に至る歴史を、その渦中の先頭に立って戦ってきた一番の戦友として書き残していきたいと思う。執筆しているタイミングが殿堂発表直前で何を書けば良いか難しいという事裏情もありつつ、実は以前より折を見てちゃんとまとめたいと考えていた。そのうちきっと忘れてしまうからだ。
あれから1年半以上経つが、
今ならまだ鮮明に憶えていられる。そしてこれは「聞いた話」なんかで雑にまとめられたくない。自分で納得いく内容をちゃんと書きたい。 《絶望神サガ》の短くて濃密な生涯を振り返っていこう。目次
▪️ざわつき
▪️エラッタはございません
▪️再現性を突き詰めて
▪️実質的な《天災 デドダム》の発見
▪️派生形
▪️おわりに
ざわつき
その夜、SNSは大きなざわつきを見せた。 2023年2月発売の新パック「ヒーローズ・ダークサイド・パック~闇のキリフダたち~」にて、
とりわけ異質なカードの収録が発表されたのである。
《絶望神サガ》
このクリーチャーが出た時、または自分のターンのはじめに、カードを1枚引き、自分の手札を1枚捨てる。その後、自分の墓地にクリーチャーが3体以上あれば、コスト5以下のゴッドまたはコスト5以下のオリジンを1体、自分の墓地から出してもよい。そうしたら、このクリーチャーを破壊する。
《
氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》をプレイした後に《
絶望神サガ》が墓地や手札に2枚揃うと、
それだけ無限ループすると書いてある。そんなはずはないのだが、やはり何度読んでもそう書いてあり、強いカードに対する驚きというよりは「このテキストは間違いではないのか」という不安に包まれる異様な空気だった。程なくして種族に「オリジン」を持つ《
黙示賢者ソルハバキ》を踏み倒し、闇マナを生成しつつ《
超神星DOOM・ドラゲリオン》を召喚。その後メテオバーンで《
一なる部隊 イワシン》を捨てつつ《
水上第九院 シャコガイル》を踏み倒すとEX-WINできるという、
前代未聞の3キルのルートが発見された。筆者もすぐにテストプレイしてみたところ、
この時点で歴代のあらゆるデッキを凌駕しており、「そのうちエラッタで使えなくなってしまうんだろうな」という感想を抱かされた。そして数日後、公式から異例のアナウンスがあった。
それは多くのユーザーの期待を裏切り、筆者の期待に応えた。エラッタはございません
《絶望神サガ》は《絶望神サガ》だった。
ユーザーの異常な反応を見た公式から、
「エラッタはない」と断言する異例のアナウンスが行われたのである。
(引用:デュエルマスターズ公式サイトより)
この瞬間をもって当時の【4c邪王門】を中心とする比較的後ろに寄った環境はたちまち過去となり、
全ユーザーが【サガループ】と向き合う全く新しいデュエルマスターズが始まった。多くのエンジョイユーザーからすればネガティブな要因の一つであったことは間違いなかったが、
反対に筆者は心の底から嬉しかった。 来たるDMPランキング2023年度前期を走ることを決めており、やや苦手意識の強かった旧環境デッキと向き合わず、
「歴代最強」が確定しているデッキと共に走れることとなったからだ。強いデッキを強く使うのが好きだ。とりわけ相対的な強さではなく、時代を超えても渡り合えるほどの絶対的な強さが大好きだ。その日からというもの、右手で数えられるくらいのほんの数回の気分転換を除き、全ての大会に【サガループ】で参加することとなる。
その数は優に200を超える。異常だ。故にこの解説ができるという訳だ。再現性を突き詰めて
まず最初に着手した基盤は「フルパワー」だった。
当然メタを超えるギミックも採用するが、何より「自分の動きを通す」つまり「3キルの再現性」に着目して構築を始めた。
サンプルデッキリスト①
1ターン目に《
ロスト・ウォーターゲイト》をプレイし《
絶望神サガ》を手札へ、続くターンに《
氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》や《
龍装者“JET”レミング / ローレンツ・タイフーン》をプレイし、3ターン目には《
絶望神サガ》を2枚揃えてEX-WINする、という極めてシンプルなコンセプトだ。
また、4ターン目に《
ロスト・ウォーターゲイト》をプレイして、残る3マナで《
絶望神サガ》を召喚する、というプレイも鉄板だった。
当時はまだ《
一なる部隊 イワシン》が4枚使えたことから、
とにかく《絶望神サガ》を引き込む再現性が高く、かなりの確率で3キルないしは4キルを実現していた基盤だった。後に殿堂候補とまで言われる《
絶望神サガ》からの最強の蘇生先、《
蒼狼の大王 イザナギテラス》の評価を見誤って3枚に減らしてしまっているが、暫くして4枚確定枠へ昇格していく。
《
黙示賢者ソルハバキ》をフィニッシュに絡められない際には、
《終断γ ドルブロ / ボーンおどり・チャージャー》がその代用となった。 山札枚数がある程度少なくなったタイミングで《
絶望神サガ》からの蘇生先を《
蒼狼の大王 イザナギテラス》に変更し、《
終断γ ドルブロ / ボーンおどり・チャージャー》をプレイすることで闇マナを確保しながら《
超神星DOOM・ドラゲリオン》をプレイできたため、《
黙示賢者ソルハバキ》の2枚目として重宝していた。
文明も強力で下面もプレイアブルと非常に強力なカードであった一方で、マナに触れる《
黙示賢者ソルハバキ》とは異なり序盤に埋めてしまった《
超神星DOOM・ドラゲリオン》や《
水上第九院 シャコガイル》を回収する動きができない。
そういったイレギュラーにも対応する形で《
黙示賢者ソルハバキ》が1枚だけ採用されていたという経緯がある。
メタクリーチャーへの対応は手始めに《
龍装鬼 オブザ08号 / 終焉の開闢》と《
「敬虔なる警官」》を採用しており、《
とこしえの超人》や《
若き大長老 アプル》といったカードはあまり大きな問題にならなかった。
反対に《
DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》や《
空間型無限収納ストラトバッグ》のような露骨なメタフィールドについては、ループフィニッシュに頼らず山札を掘り進め、普通に《
超神星DOOM・ドラゲリオン》をプレイして《
水上第九院 シャコガイル》を踏み倒すことでなんとか突破できた。
この時点で既に「1種類のメタではどうにもならない」という状況は確認できており、自由枠も多くあとは環境に合わせてどう採用カードを変えていくか、という完全に王者側の立ち位置に君臨していた。受けについても一級品で、そのカギは1枚だけ採用された《終末の時計 ザ・クロック》にある。例えば相手ターン中に《
冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》からサガループに入った場合、後に紹介する【晩餐サガループ】とは異なり、《
超神星DOOM・ドラゲリオン》フィニッシュに用いる性質上、そのターン中に勝ち切る状況にまでは至らなかった。
しかし《
終末の時計 ザ・クロック》を1枚採用しておくことによって、
《絶望神サガ》→《蒼狼の大王 イザナギテラス》→《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》→《終末の時計 ザ・クロック》でターンを強制終了し、続くターンに《超神星DOOM・ドラゲリオン》という、事実上の《終末の時計 ザ・クロック》5投という構造に発展した。《
終末の時計 ザ・クロック》といい《
終断γ ドルブロ / ボーンおどり・チャージャー》といい、それぞれのキーパーツが「雑に強いカード」であったことも強かった要因として大きいだろう。
コンボデッキと言うには「無駄」が極めて少ない。サンプルデッキリスト②
数日経って微調整を加えた構築に《疾封怒闘 キューブリック》が採用された。 個人的には【サガループ】に革命を起こした1枚だと思っていて、用途が大きく分けて3つある。1つ目がメタクリーチャー、特に《ガル・ラガンザーク》の除去。 4投の《
ガル・ラガンザーク》で【サガループ】に対抗しようとする【水魔導具】だったが、《
ガル・ラガンザーク》の早期着地とは、言い換えれば《
卍 新世壊 卍》が育っていない状況で、リソースが極めて細い。
そこに対して【サガループ】側はのらりくらりとルーターを連打して手札を整え、5ターン目に《
氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》や《
龍装者“JET”レミング / ローレンツ・タイフーン》から《
疾封怒闘 キューブリック》を捨て、続く3マナから《
絶望神サガ》を召喚することで突然コンボ起動、という流れで
完全な有利を主張できた。そしてこの話には続きがあって、【水魔導具】と【サガループ】の因縁は《
絶望神サガ》が殿堂入りするまで続くこととなるのだが、この段階の《
ガル・ラガンザーク》に特化した【水魔導具】が相手として一番やりやすかっただろう。
後に《ガル・ラガンザーク》が殿堂入りしたことで仕方なく採用され始めた《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》の方が、スムーズな除去が難しく厄介な存在となり最強のライバル関係となるのだが…また後日詳しく紹介させていただく。
2つ目が《絶望神サガ》や《蒼狼の大王 イザナギテラス》の再利用。
《
疾封怒闘 キューブリック》の効果をストックし、コンボ中に使い回したいクリーチャーを適切なタイミングで手札に戻すことで、効果を再利用することができる。
《蒼狼の大王 イザナギテラス》の事実上の5枚目と言っても差し支えない。3つ目は《CRYMAX ジャオウガ》に対する意識外からのカウンター。
メタカードで牽制しながら《
CRYMAX ジャオウガ》に繋げる【アナカラージャオウガ】と呼ばれるデッキに対し、
手札の枚数を調整して《CRYMAX ジャオウガ》を”誘う”プレイが存在した。 満を持して攻撃してきた《
CRYMAX ジャオウガ》のハンデス効果で《
疾封怒闘 キューブリック》を捨てさせ、隣にいるメタクリーチャーを除去しつつT・ブレイクを貰い、逆にその3枚をリソースとして反撃するというものだ。
多色かつ状況を選ぶが故に誰しもが採用するカードではなかったが、拾った試合は数知れず。 少し意地悪な言い方をすると
「【サガループ】を脳内でメタった人」に対して、その計算を狂わせる悪魔的な1枚だったと言える。
実質的な《天災 デドダム》の発見
構築が洗練され始め、いよいよ【サガループ】が最強であることを誰もが実感し始めた頃、環境は完全に【サガループ】VS【メタクリーチャー搭載デッキ】or【墓地リセット搭載デッキ】という構造に。
そこで気になり始めたのが
「2ターン目のルーターの返しから墓地リセットを撃たれ続けると、3ターン目4ターン目とループに入れなくて勿体ない」ということだ。
【サガループ】は確かに強力なデッキではあるものの、コンボ起動には必ず下準備は必要だ。
かつての【オカルトアンダケイン】のように、何もないところからいきなり零龍卍誕まで大爆発する、という芸当はできない。
そのマナ域ごとに「出来ること」がハッキリしている。故にリソースを伸ばされながらメタを重ね掛けされる、という対策のされ方には少々苦戦を強いられた。 分かりやすい例で言えば《
闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》から《
龍素記号wD サイクルペディア》に繋がれて…といった具合だ。
「ゲームレンジをずらせる《終断γ ドルブロ / ボーンおどり・チャージャー》は強力だが、使うと手札が減ってパーツを抱えきれない…」最初はそんな発想から、
Rev編の絶版パック開封動画撮影中に出会ったとあるカードと目が合う。サンプルデッキリスト③
《コダマダンス・チャージャー》。 手札の減らないチャージャーが存在した。つまり大体《天災 デドダム》だ。いや《
天災 デドダム》は言い過ぎだが、こと【水闇サガループ】においては十分過ぎる。
これが最初の大きな転換期だったと思う。
このカードの発見により、今までは相手目線「次のターンに負けることはない」と思わせていた3ターン目すら「王手」とし、手札を減らさずに次のターンに5マナの状況を作ることができるようになった。このタイミングで当たる墓地リセットは刺さらないどころか、
なんならシールド1枚分の公開領域が増えていてループ完成にも近付いている。《コダマダンス・チャージャー》から《コダマダンス・チャージャー》と繋げば、5ターン目には7マナ。こうなればメタなど気にもならない。《
蒼狼の大王 イザナギテラス》からもプレイでき、道中はもちろんフィニッシュターンにはシールドを1枚回収しつつ闇マナを生成でき、《
終断γ ドルブロ / ボーンおどり・チャージャー》にはない「ワンチャン《
超神星DOOM・ドラゲリオン》や《
水上第九院 シャコガイル》を盾から拾う」というチャレンジさえ可能となった。
まだ終わらない。ギャラクシールドでシールドに張り付いた《「敬虔なる警官」》を回収し、再利用することができる。といった具合で、
水闇の基盤にもかかわらずアナカラーのような挙動までし始め、いよいよ全ての墓地リセットとメタクリーチャーが刺さらなくなった。 唯一フィールド系だけは面倒ではあったものの、これもまた《
コダマダンス・チャージャー》や《
氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》の上面でリソースを伸ばしまくると《
水上第九院 シャコガイル》まで到達してEX-WINができてしまうという事態。
サンプルデッキリスト④
その後程なくして、
《一なる部隊 イワシン》の殿堂入りが発表された。【サガループ】にとって明確な痛手ではあったものの、その後の基盤を支え続けたのは間違いなく《
コダマダンス・チャージャー》だった。
3キルの再現性こそ大幅に失われたが、
「後ろに伸ばしてメタを超えていくゲーム」に関しては健在だ。加えて《
一なる部隊 イワシン》の空いた枠に《
蒼神龍ヴェール・バビロニア》が採用され始めたことで、
相手に干渉しつつ自分のリソースを大幅に伸ばすゲーム進行が可能となった。ここで少し他人行儀な書き方になったのには理由がある。 筆者はこの頃には既にこの基盤に触れずに、全く別の【サガループ】の研究に明け暮れていたのだ。それが後に「王者」となる、皆さんが一番よく知るであろう
【晩餐サガループ】の最初の一歩である。
ここから新殿堂発表まで、【晩餐サガループ】はあらゆるデッキにメタられ、その全てを超えていく。次回はその序章からお話していきたい。最後に少しだけ自分がメインで触っていた訳ではない派生形も紹介して終わろうと思う。
派生形
アナカラーサガ
最強位決定戦で準優勝となったのがこの
【アナカラーサガ】だ。
サガループのギミックも搭載しつつ、豊富な受けに加え、メタクリーチャーをはじめとした様々なサブプランが採用されている。
3キルの再現性こそ極めて低いものの、
同型戦で強く出られる点が強みな基盤だった。特筆すべき点として《
一なる部隊 イワシン》の殿堂入りの影響を全く受けておらず、その後も競技シーンでは一定の活躍を見せ続けた。
【サガループ】の歴史を語る上では欠かせない派生形だ。
元祖クローシスサガ
知人が2度ほどCSで優勝した基盤で、
後に登場する【クローシス晩餐サガ】の原型とも言える基盤。《
コッコ・武・ルピア》、《
ボルシャック・スーパーヒーロー / 超英雄タイム》、《
凶鬼03号 ガシャゴズラ》等のカードを駆使して《
龍素記号wD サイクルペディア》のストックを任意の回数作り、最終的に《
ブラッディ・クロス》連打で勝利する。
注目すべきは何と言っても《百鬼の邪王門》で、相手ターン中にループを始めるほか、《デビル・ドレーン》を撃つことで能動的にプレイして信じられない角度からループに入ることも可能だ。
加えてこの《邪神M・ロマノフ》が、後に主流となる【水闇晩餐サガループ】最強のキーパーソンになることを、まだこの時点での我々は知る由もなかった。おわりに
ここまでは【サガループ】が登場してから
僅か1ヵ月程度の話に過ぎず、本番はここから、といったところだろう。次回も楽しみにしておいてほしい。
書いていて改めて思うが、
カードゲームにおいて、その時の英雄たちを使い手が正しく資料として残していくことには、非常に高い価値があると感じた。 今みなさんが使われているデッキについても、沢山発信して後世に伝えていってほしい。
それではまた次回、
「最強の《絶望神サガ》が最強になるまで②【晩餐サガループ】爆誕」でお会いしよう。
ZweiLance