デュエルマスターズ歴代最強カード、『絶望神サガ』本コーナーは【サガループ】がいかにして研究され、いかにして消えていったのか、その歴史を当事者目線で紐解いていくものである。
前回は
《超神星DOOM・ドラゲリオン》をフィニッシャーとしたいわゆる【DOOMサガ】の歴史について触れたが、
今回からはいよいよ最終形態となる、より複雑化し圧倒的な対応力を獲得した【晩餐サガ】について触れていく。いくつもの転換期を経て、真の最強へと近付いていく様子をお話しよう。
目次
▪️晩餐型登場
▪️殿堂解除選手権の誤算
▪️真・クローシスサガ
▪️スタートWIN・スーパーデッキ 深淵の邪襲
▪️おわりに
晩餐型登場
2023年3月。2023年度DMPランキングが4月からいよいよ始まろうというとき、
とある全く新しい基盤の【サガループ】がプレイヤーによって公開された。【晩餐サガ】。従来の
《超神星DOOM・ドラゲリオン》+
《水上第九院シャコガイル》によるフィニッシュではなく、
《蝕王の晩餐》を使い
《蒼狼の大王イザナギテラス》を
《龍素記号wDサイクルペディア》に、
《龍素記号wDサイクルペディア》を
《サイバー・K・ウォズレック/ウォズレックの審問》に転生させ、最終的に
《機術士ディール/「本日のラッキーナンバー!」》を任意の回数唱え相手を行動不能とし、事実上のEX-WINを目指す、呪文を主体としたコンセプト。
この基盤が優れていたポイントとして、ループパーツこそ【DOOMサガ】より多くなるのだが、その個々のカードがゲーム進行においても非常に強力であったこと。《龍素記号wDサイクルペディア》は、相手のメタカードと何度も付き合うようなロングゲームにおいても、普通に場に出すことでリソース差を広げ、最終的にループに辿り着いて勝つ、というようなゲームを容易にした。またループ導入においても、墓地に置いておくことで
《蒼狼の大王イザナギテラス》から
《蝕王の晩餐》を経由して蘇生し、そこから
《冥界の不死帝ブルース/「迷いはない。俺の成すことは決まった」》を使い
《絶望神サガ》を蘇生すると、【DOOMサガ】ではターンを返さざるを得ないような状況でも、難なくループに向かうことができた。
《サイバー・K・ウォズレック/ウォズレックの審問》はもはや初動だった。下面をプレイして相手のリソースあるいはメタカードを抜き去り、
《絶望神サガ》を普通に召喚するだけでチェックメイト。相手のメタは結局リソースとのトレードオフとなるので、そのリソースの部分を奪ってしまえば、結局優位に立てるのはこちら側となる。
こうなるともはやどちらがメタられているのか分からない。ゲームが伸びれば徐に上面として出てきて、相手の墓地の呪文を奪ってリソースを伸ばし始めた。
こうした要素を高く評価し、筆者はランキング初日からCSに【晩餐サガ】を持ち込んだのだが、
1ヵ月ほぼ毎日参加して優勝は1度きり。ベスト4以上に関しても1度だけと、あまり振るわなかった。
この時点での最大の課題として、細かく盤面に触ることに関してはまだまだ不得手だったことが挙げられる。
後に
それを解決するあるカードが登場するのだが、それまでのこのデッキは、お世辞にも最強とは言えなかっただろう。
殿堂解除選手権の誤算
少し前に公式にて『殿堂解除選手権』と銘打って様々なカードが殿堂入り、あるいは無制限に降格されたのだが、
その中の1枚に含まれていたあるカードが、なんと【晩餐サガ】に悪用されてしまった。【水闇晩餐サガ(殿堂解除後)】
邪神M・ロマノフ
コスト5以下かつ種族「ゴッド」であることから《絶望神サガ》から蘇生でき、なんと序盤マナに置いた《蝕王の晩餐》を唱え、《邪神M・ロマノフ》を《サイバー・K・ウォズレック/ウォズレックの審問》に転生させ、そのままループに直行できるのだ。これにより、
《蝕王の晩餐》の採用枚数を無理に増やしたり手札に抱える必要性がなくなり、一気にデッキの動かしやすさが上がった。
また出た時点で公開領域が3枚増えるため、
そこで《絶望神サガ》が見つかるパターンもありつつ、
《冥界の不死帝ブルース/「迷いはない。俺の成すことは決まった」》あるいは
《絶望と反魂と滅殺の決断》を唱えて使い終わった
《絶望神サガ》を蘇生するだけでも、そこからループに向かえるパターンも頻発し、
《絶望神サガ》の4.5枚目と言っても差し支えない程の活躍を最後まで見せてくれた。真・クローシスサガ
迷走しているうちに、変なサガができた。【火自然アポロヌス】や【火単我我我】も増えてきていたタイミングで、
当時の【水闇晩餐サガ】の課題として挙げられたのが受けの脆さ。《冥界の不死帝ブルース/「迷いはない。俺の成すことは決まった」》から
《絶望神サガ》を出す最強のカウンターこそあれど、下準備前に攻め込まれてはひとたまりもない。
そんな課題を解決すべく、黎明期の【ガシャゴズラ型】みたく
《百鬼の邪王門》で切り返せないかと試行錯誤した結果できたのがこの【水闇火晩餐サガ】で、見た目は若干カオスだが、
これがハマり苦節1ヵ月ぶりに最終的にCSで優勝することができたのだ。決勝戦の相手は期待通り【火単我我我】だった。
【水闇晩餐サガ】以上に殴る相手との対話を強いられることから、本人曰く
「とにかく楽しい」とのことで、後に同カードラッシュプロ所属の
すめらぎ選手が最後まで愛用し、
全国大会出場も決めることともなる基盤だ。
確かに、墓地が空なのに《百鬼の邪王門》から《絶望神サガ》や《龍素記号wDサイクルペディア》を捲ってループに入ると、とんでもない悪さをしている気分にはなれる(笑)《邪神M・ロマノフ》の素出しもしやすく、マナから
《百鬼の邪王門》をプレイすると、本当に無からループに入ることさえできた。
《デビル・ドレーン》を使い事実上の5ドローかつ相手のダイレクトアタックに対して
《百鬼の邪王門》を構えるアグレッシブな動きを可能とした。
《ボルシャック・スーパーヒーロー/超英雄タイム》は当時の【水闇晩餐サガ】にはできなかった、軽量呪文による盤面除去を可能とし、
メタカードに付き合うゲーム進行としてはこちらの方が優れていたと言える。
《“乱振”舞神 G・W・D》はメタクリーチャーの除去とリソース確保を兼ね備え、
《瞬閃と疾駆と双撃の決断》はフィニッシャーでありながら、
《蒼狼の大王イザナギテラス》から使え効果で
《絶望神サガ》を出せるため、
《冥界の不死帝ブルース/「迷いはない。俺の成すことは決まった」》の事実上の5枚目としても運用できた。
三色故の事故率にさえ目を瞑れば、当時の結論となる【晩餐サガ】はこの【水闇火晩餐サガ】になると今になって思う。
そうして【水闇火晩餐サガ】と【水闇晩餐サガ】、この2つを持ち替えつつ悪くない成績で少し軌道に乗ってきた頃、ある事件が起きる。
全く関係ないテーマの新商品を吸収し、【水闇晩餐サガ】が遂に最強になってしまった。スタートWIN・スーパーデッキ 深淵の邪襲
「スーパーデッキでデュエマをはじめようぜ!」
「スタートWIN・スーパーデッキ 深淵の邪襲」が2023/5/20に発売された。
基本的にはアビスの汎用カードの再録が目立ち、初心者にもガチ勢にも嬉しいラインナップなのだが、
そこに紛れたたった1枚の何気ない汎用S・トリガーアビスが、【水闇晩餐サガ】を完成させてしまう。まず下面に関して、【水闇晩餐サガ】の抱えていた
「盤面を細かく処理しづらい」という課題を解決する軽量除去であり、
《若き大長老 アプル》や《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》、《とこしえの超人》なんかを処理するタイムラグが完全に消滅した。2ターン目にプレイするも良し、4ターン目に
《蒼狼の大王イザナギテラス》からプレイするも良し、5ターン目にプレイして残った3マナ
《絶望神サガ》をプレイするも良し...
《龍素記号wDサイクルペディア》下で2連打すれば2体処理まででき、
とにかくその手の「メタカードになんとかしよう」というデッキに爆発的に勝率が上がった。加えて上面、【火単我我我】に踏ませて致命傷レベルの複数除去に加え、メタカード+
《CRYMAXジャオウガ》というよくある進行に対し、
とんでもないリスクを付けることとなり、これまた爆発に勝率が上がった。
そうして完成した基盤がこちら
【水闇晩餐サガ】
その日の体感はまさに”異次元のデッキ”だった。恐らくこの先もうないであろう、1日に2度CSで優勝した。3キルの再現性はそのままに、メタカードに触れるカードの総数が自然と増えたことで、不利対面という不利対面は【水魔導具】だけとなり、その【水魔導具】にも4割以上の勝率は担保され、文字通り最強のデッキとなった瞬間がここだろう。
おわりに
《ドアノッカ=ノアドッカ/「…開けるか?」》の登場で一気に最強となった【水闇晩餐サガ】だが、周りのデッキも本気の抵抗を見せる。
次回最終回では、
最強のライバルであった【水魔導具】についてや、最終的にこの
《ドアノッカ=ノアドッカ/「…開けるか?」》が抜けていき、皆さんお馴染み
《飛翔龍5000VT》を手に入れ真の最終形態になる過程についてお話していきたい。
そして最終的に、《絶望神サガ》を使うことは正解ではなくなってしまう。強過ぎるが故に、最後に立ちはだかった最大の敵は、『絶望神サガ』自身だったのだ。ZweiLance