「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」レポート │ 高橋優太


こんにちは、高橋優太です。

先週末は、アメリカのラスベガスにて開催された「プロツアー・ファイナルファンタジー」に参加しました。
会場はかなり広く、展示物や物販、アーティストブースが充実していました。


前回から引き続き、海外チーム・コスモスでの練習で、プロツアーの1週間前からアパートを借りて、練習合宿を行います。

前よりは英語での会話力も上がり、楽しくなってきました。
以下そのレポートです。


前回のレポート「プロツアー・霊気走破」はこちら



目次

▪️チーム・コスモス紹介
▪️練習風景
▪️スタンダードのメタゲーム予想
▪️スタンダード使用デッキ「ディミーアミッドレンジ」
▪️ドラフト
1stドラフト
2ndドラフト
▪️大会結果
▪️おわりに


チーム・コスモス紹介


Javier Domínguez(ハビエル)
スペイン出身。
2018年と2024年の世界選手権優勝。
日本語が少しわかるので、「おはよう」「先攻!」「後攻!」とか練習中によく話す。

Anthony Lee(アンソニー)
オーストラリア出身で現在はカナダ在住。
チームのリーダーで、コミュニケーション力が高く人当たりが良く、多人数をまとめる力がある。新メンバーはだいたいアンソニーの勧誘によるもの。

Paulo Vitor Damo da Rosa(パウロ)
ブラジル出身。
マジック・プロツアー殿堂顕彰者。2019年の世界選手権優勝。
ここ数年はプロマジックから離れていたが、ファイナルファンタジーを機に久々に復帰。
甘いものが好き。

Márcio A Carvalho(マルシオ)
ポルトガル出身。
世界有数のリミテッドの名手。
2019年と2024年の世界選手権決勝で、上記の2人に負けて準優勝だったことを嘆いている。
日本がとても好きで、年に数回家族と旅行に来ている。

Willy Edel(ウィリー)
ブラジル出身。
2015年にマジック・プロツアー殿堂入り。Magic Onlineのイベントに普段から頻繁に出ている。
ブラジルの公用語はポルトガル語なので、チーム内ではよくポルトガル語での会話が聞こえる。

Sean Goddard(ショーン)
アイルランド出身。
コンボデッキが得意。ゆっくり明確に話し、言葉遣いが綺麗。
チーム内リミテッドミーティングの中心的存在で、教授(Professor)と呼ばれる。

Marco del Pivo(ピヴォ)
イタリア出身。
ミッドレンジが得意。イタリア料理の次に日本料理が好き。アメリカの料理はあまり好きではない。

Christoffer Larsen(クリス)
デンマーク出身。
長年プロツアーの常連で、マジックの歴史の話が好き。本職はミシュランで働いたこともあるほどの料理人。
毎回素晴らしい手料理を振る舞ってくれる。

Thierry Ramboa(ティエリー)
フランス出身。
陽気でノリが良い。練習熱心で、僕とティエリーはいつも朝6時から練習していた。

Bernardo Torres(べナス)
ポルトガル出身。
チーム内最年少だがプレイの腕は確か。日本のアニメが好きで、「呪術廻戦」が終わった事を嘆いていた。

Quinn Tonole(クウィン)
アメリカ出身。
リミテッドのデッキデザインが上手く、練習で強い街デッキを作る事が多かった。

Victor Hawkins(ヴィクター)
アメリカ出身。
人当たりが良くコミュニケーションが円滑で、いつもデッキの議論の中心になっていた。

Jake Beardsley(ジェイク)
アメリカ出身。
プロツアー指輪物語優勝。ミッドレンジが得意。

Toni Ramis Pascual(トニ)
スペイン出身。
イゼット果敢マスターで、練習中もイゼット側の意見を多く出してくれた。

練習風景

ラスベガスに到着。木曜日から水曜日まで一軒家を借りて、共同生活しながら練習します。

練習中は規則正しく生活。朝9時にミーティングして一日の練習予定を決めて、その後ドラフト開始!
ドラフト終了後は、8人それぞれのピックや流れを振り返って意見を交換します。

17Landsのデータを元に、2色それぞれの色の組み合わせの勝率や、勝ちやすい色を模索します。
カード単体についても深く議論して、例えば今回の継承史カードもすべて検討していました。《偉大なる統一者、アトラクサ》は初手でも取って良い強さ。

今回のドラフトは長期戦のアドバンテージゲームになる事が多く、青黒緑のスゥルタイカラーでのカードを優先する方針でした。

スタンダード練習中。パウロが上手すぎてテンション上がってます!

夜まで練習した後は、料理人クリスによるスペシャルディナー!
大量調理に慣れているらしく、あっという間に炒め物と、ステーキ肉が焼き上がって行きます。

美味すぎる!(今回もおかわりしました)
トマトパスタの日も美味しかったです。

スタンダードのメタゲーム予想

迷える黒魔道士、ビビコーリ鋼
さてスタンダード練習。
今回のプロツアーで、最も多いと予想したのはイゼット果敢でした。もともとのデッキの安定性、速度で申し分ないデッキであり、そこに《迷える黒魔道士、ビビ》が加わった事で更に強化されました。

最大の仮想敵として練習して、予想するメタゲームの割合はイゼット果敢が30%。

心火の英雄全知
メタゲームの2番手は赤単アグロと、全知コンボ。どちらも4ターンキルするほどの速度を持ち、イゼット果敢に対しても十分戦えるデッキです。

予想するメタゲームの割合はそれぞれ15%ずつ。

一時的封鎖真昼の決闘
イゼット果敢が多いと予想するなら、メインに《一時的封鎖》《真昼の決闘》を入れたデッキもあり得ます。デッキリスト公開制なら、マリガンでそれらを探しに行く事も出来ますからね。

イゼット果敢と赤単の両方に効く《一時的封鎖》が強いこと、中速デッキ全般に有利が付く事から、コスモスのチームメイトの多くは全知コンボを選択。
チームのデッキ選択はイゼット果敢3人、全知コンボ8人、赤単1人、ディミーアミッドレンジ1人、イゼット大釜2人という割合に。

実際のメタゲームはイゼット果敢が42%、全知コンボが20%と、どちらも予想より多い割合でした。

メタゲームの4番手と予想していたディミーアミッドレンジはわずか3%で、これは全知を使うチームメイトにとって朗報!

スタンダード使用デッキ「ディミーアミッドレンジ」


デッキリスト
土地:25
5:《沼/Swamp》
3:《島/Island》
4:《地底の大河/Underground River》
4:《グルームレイクの境界/Gloomlake Verge》
4:《闇滑りの岸/Darkslick Shores》
2:《不穏な浅瀬/Restless Reef》
3:《魂石の聖域/Soulstone Sanctuary》

クリーチャー:16
4:《暗黒騎士、セシル/Cecil, Dark Knight》
2:《フラッドピットの溺れさせ/Floodpits Drowner》
2:《群青の獣縛り/Azure Beastbinder》
4:《分派の説教者/Preacher of the Schism》
4:《永劫の好奇心/Enduring Curiosity》
呪文:19
4:《切り崩し/Cut Down》
2:《強迫/Duress》
2:《呪文貫き/Spell Pierce》
4:《喉首狙い/Go for the Throat》
2:《呪文どもり/Spell Stutter》
1:《否認/Negate》
3:《悪夢滅ぼし、魁渡/Kaito, Bane of Nightmares》
1:《ギックスの命令/Gix's Command》

サイドボード:15
2:《苦痛ある選定/Anoint with Affliction》
3:《ティシャーナの潮縛り/Tishana's Tidebinder》
2:《否認/Negate》
2:《強迫/Duress》
2:《黙示録、シェオルドレッド/Sheoldred, the Apocalypse》
2:《フェアリーの黒幕/Faerie Mastermind》
1:《覆い隠し/Blot Out》
1:《ギックスの命令/Gix's Command》
ディミーアミッドレンジを使用しました。

イゼット果敢に対しては勝率は45%ほどですが、絶対に負けるほどではなく勝てる事もあり、赤単に対しては軽い除去の多さから5分だと感じています。他のイゼット果敢を対策してきた白系のデッキに対して有利な事から、イゼット果敢さえ乗り越えれば勝てると信じて選びました。
(実際はイゼット果敢が予想よりも多かったですが)

《群青の獣縛り》は特にイゼット果敢に対して強い2マナ域で、相手の《コーリ鋼の短刀》やサイド後の《轟く機知、ラル》を能力で無効化できます。全知コンボがサイド後に採用してくる《ミストムーアの大主》《勝利の楽士》に対しても無効化出来て便利。《永劫の好奇心》でのドローにも繋がりやすい。

《分派の説教者》は火力1枚で除去しにくく、ブロック時に《巨怪の怒り》で乗り越えられたとしても、接死で相手に複数のカードを要求できます。バウンスされても出し直しやすいマナ域なのが、特にイゼット果敢に対して強いです。

《永劫の好奇心》《塔の点火》の3点追放除去が弱点ですが、適切なタイミングで出せば2-3ドローはする事が出来ます。逆に言うと、《永劫の好奇心》を引かないゲームはリソースが枯れやすい。
枚数を減らす事は検討しましたが、ディミーアはどこまで行っても《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》を中心としたデッキであり、4枚必要だと感じました。

《悪夢滅ぼし、魁渡》はいつも強いわけではなく、盤面によって強さがかなり変わるカードです。
今のスタンダードは赤が強いため、魁渡を出した返しに速攻クリーチャーで攻撃される可能性を考慮しなければいけません。赤単にはサイドアウトしますし、イゼット果敢は相手の構成次第で少しサイドアウトします。《声も出せない》がたくさん取られているなら、忍術で剥がして強い場面もあります。

魁渡は赤相手には基本弱いですが、それでもミッドレンジ対決では最も強いカードであり、魁渡があるからこそ白ミッドレンジや黒ミッドレンジに対して勝率を保つカードです。メイン2サイド1でも良いとは思います。

ディミーアを使った理由の一つに、後手での対応力があります。

スタンダードのデッキは全て練習した上で感じたのが、どのデッキでも先手は勝つけど後手は負ける、という事。特にイゼット果敢と赤単の先手の押し付けがあまりにも強い。
そんな中、ディミーアだけは相手の先手の良い回りに対抗するカードが複数ありました。《切り崩し》《強迫》《呪文貫き》はどれも、後手でもゲームを組み立てやすい。

《呪文どもり》《迷える黒魔道士、ビビ》《食糧補充》の両方を打ち消せるカードが欲しくて、《幻影の干渉》だとトークンを生成する事が全く無かったので、《フェアリーの黒幕》《魂石の聖域》があれば3マナ要求になる打ち消しを選びました。

《暗黒騎士、セシル》もまた、後攻で守りに使って強いカードとしてとても評価しています。
特に赤単に対してのブロッカー性能が高く、2/3接死は相手の速攻クリーチャーを止めやすい。ある程度ライフを削られたら、《覚醒のパラディン、セシル》に変身してライフレースを逆転する事が出来ます。

《暗黒騎士、セシル》《分派の説教者》のどちらもライフを参照する能力なので、《地底の大河》からわざとダメージを受けるプレイは良く起こるので覚えておいて下さい。
例えば1ターン目《地底の大河》から《暗黒騎士、セシル》を出せば、3回の攻撃と4回のダメランダメージで、4ターン目に《覚醒のパラディン、セシル》に変身します。

サイドボードで特に感触が良かったのは《ティシャーナの潮縛り》で、イゼット果敢はサイド後にクリーチャーを減らしてミッドレンジ化してくる傾向にあったので、そこでの対応力が高かったです。

逆に感触が悪かったのは《黙示録、シェオルドレッド》高速化したスタンダードで、4マナで除去耐性のない「生き残ったら勝ち」クリーチャーは環境に合っていないと感じました。
《声も出せない》など軽いマナで対処された時に、そのマナ効率の差がそのままゲームの勝敗に直結します。イゼット果敢は《声も出せない》《一斉蜂起》などを取っており、赤単も5点火力をしっかり入れてくるので、シェオル勝ちはかなり少ないです。正直シェオルではなく他の軽いカードにすべきでした。

ドラフト

1stドラフト

フェニックスのドミナント、ジョシュアフェニックスのドミナント、ジョシュア
1パック目の初手は《フェニックスのドミナント、ジョシュア》他の候補が弱く、自動的に強レアをピック。

「侍」の刀
2手目は《「侍」の刀》。全アンコモン中でもトップクラスの性能で、赤白装備デッキに行けそう。

陽気な義賊、ジタンドワーフの王、ジオット
その後1パック目で遅めに《陽気な義賊、ジタン》《ドワーフの王、ジオット》が流れてきた事から、素直に赤白装備デッキを目指します。

雷魔法メテオストライク
2パック目は除去を取りつつ、色の合わない《人造魔導士、ケフカ》を流したのが心配。

魔女の野望
1パック目7手目で取れた《魔女の野望》は、ドラフトで過小評価されているカードの一つです。
除去が3-4枚取れていれば追加の除去として機能するので、特に長期戦で強いカード。一番強いのは青赤で使ったときですが、除去が取れていれば赤白でも十分強かったです。

欲を言えば《上級建設官、スラム》のためにもう1枚装備品が欲しかったですが、マナカーブが良く除去もあり満足な出来。
最終戦で長引いて引き分けてしまい、2勝0敗1引き分け。

2ndドラフト

白聖石
1パック目の初手は《白聖石》。白のトップコモンです。
他の候補が無く、かなり弱めのパックでした。

バトルメニュー「ナイト」の装備
1パック目の2手目は《バトルメニュー》、3手目は《「ナイト」の装備》で、白単気味にピック。
その後7手目で《陽気な義賊、ジタン》が来たので、赤白を候補に。

フェニックスのドミナント、ジョシュア

2パック目の初手は再び《フェニックスのドミナント、ジョシュア》
しかしその後赤のカードが流れてくる事は無く、引き続き白単気味にピックして、2色目は流れてきたカードで決める事にします。
途中で《独創的な革新者、シド》もピックしていたので、青白アーティファクトも候補。

イフリートのドミナント、クライヴイフリートのドミナント、クライヴ
そして3パック目の3手目で《イフリートのドミナント、クライヴ》が流れて来ます!セット内でも屈指の強レア!
赤のカードをそれほど多く取れているわけではないですが、ジョシュアとクライブは赤をやる理由になる強レアなので、赤白に決定します。

2色目が決まるのが遅かったのでカード枚数がギリギリ。3マナ3/2機体が《武器屋》ならもっと良かったですが取れず。

デッキが少し重いですが、2枚の《白聖石》のおかげで重い所もプレイしやすい。
2勝1敗はできそうだと考えていたら、試合も2勝1敗で終わりました。

大会結果


・スタンダード初日
〇赤単アグロ
×イゼット果敢
×イゼット果敢
〇イゼット果敢
×イゼット果敢

・スタンダード2日目
×赤単アグロ
〇イゼット果敢
×ゴルガリ《陰湿な根》
〇青白全知コンボ
〇ジェスカイコントロール


スタンダード5勝5敗
ドラフト4勝2敗1引き分け


合計9勝6敗1引き分けで72位でした。

おわりに

スタンダードの敗因としては、イゼット果敢相手のサイドボーディングミスと、引き分けの管理です。

練習中は《僧院の速槍》が入った攻撃的なタイプのイゼット果敢と練習しており、サイドボードの入れ替えも想定済みだったのですが、実際に対戦したイゼット果敢はすべて《僧院の速槍》が0枚で、より重くアドバンテージを重視して、《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》《この町は狭すぎる》を複数入れたデッキタイプが多かったです。この長期戦向けのイゼット果敢は、従来の《僧院の速槍》型よりもディミーアが苦手としています。

相手が《僧院の速槍》無し、《声も出せない》2-3枚なら、《悪夢滅ぼし、魁渡》が有効に働く場面が多く、自分のサイドボーディングを修正するのに2ラウンドほど要したのが敗因です。

それとドラフトの3回戦で引き分けた事により、対戦相手のイゼット果敢も引き分けで来る。つまり長期戦向けで引き分けて来たイゼット果敢に当たる確率が上がっています。実際に、《僧院の速槍》0枚の長期戦向けイゼットばかりでした。

赤単は引き分けが少ないデッキですし、全知コンボもそうです。引き分けた時にどういう対戦相手が来るか予想して、もし自分の不利なフィールドであるなら、引き分けではなく投了する選択肢も見据える必要があります。

普段なら検討しないような箇所でも、本番で応用力が求められる場面があると実感したプロツアーでした。

MTG公式より

そして行弘さんプロツアー優勝おめでとう!苦労した時期を知るからこそ、努力した人が優勝する瞬間を見るのは嬉しいです。
僕も負けずに腕を磨いていきます。

それではまた。

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